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 こんな話を知ってる?ポケモンとポケモンは時に、トレーナー同士を引きつけることがあるらしい。つまり、相性の良いポケモンを持ったトレーナー同士が、自然と引き合わされるらしいのだ。どんなに離れていてもー。
 僕はそんな話は信じない。もしかしたらと思って信じてみても、後で現実を知って心を折られるだけ。たとえ、どんな奇跡的な偶然が続いても、絶対に信じるものかー。

 僕はメレメレ島のトレーナーズスクールに通う14歳、スバル。特にずば抜けて得意なこともない、本当に平凡を絵に描いたような男かもしれない。周囲からも「普通の男の子」以外の扱い、それ以上もそれ以下も受け付けたことはない。しかし、僕は皆に隠してることがあった。

 そう、恋心。

 それも、自分でもあまり理想的とは言えない恋だった。

 ある日の朝、僕はいつものように寮を出て学校へ向かう準備をしていた。全て整った、と思いきやテレビがついていたので、リモコンを手にとってスイッチを切ろうとした。しかし、僕は手を止めた。そこに大したものは映っていなかったが、なんとなく見入ってしまったからだった。
『シシコ座のあなた、今日は、青いリボンのついた同じポケモンを持った相手がいないかチェック!ちかいうちに、ひょっとしたら…未来のパートナーかも!?』
(くだらない…)
 僕はそこで再び手を動かし、電源を切った。僕は8月生まれのれっきとしたシシコ座生まれ。しかし今の占いは何の意味も持たないことを知っている。なぜこんなものをつい眺めてしまったんだろうと、後悔する。
 そして無駄にした時間を取り戻すように、僕は急いで部屋を後にしたのだった。

 僕の通うスクールの校舎は、男子寮から徒歩で10分ほどの場所にある。だからこうして10分間、同じ寮から出てくる大勢の男子生徒と一緒に登校しなければならず、僕にはそれが正直鬱陶しかった。全員が全員邪魔なワケではないが、みんな親しいわけでもない。そんな連中に囲まれるのを我慢しながら、今日も僕はここまで歩いてきた。
「よおスバル!」
 そう調子よく声をかけてきたのは、実技を担当しているロットー先生。昨年赴任したばかりで、たまにうちに講義をしに来るこのアローラのポケモン学会の権威、ククイ博士の友人でもあるらしい。彼は毎日こうして気に入った男子生徒によく絡んできており、そのうちの一人が僕だった。
「おはようございます、先生」
 僕は投げ捨てるように挨拶を返し、その場を通り過ぎようとした。
「おいおい、相変わらず少し冷たいんじゃないかぁ?明るく楽しく、それが我が校のモットーだぜ!」
「はぁ…」
 こんなやりとりはもう何十回繰り返したかわからない。正直もう飽きてきているのだが、以前数度、先生が門の所に立っていない日があって、その時はやけに1日が侘びしく感じられたものだった。つまり、このやりとりは僕にとって1日の始まりの合図みたいなものとして定着しているので、今では受け容れることにしている。
 そして先生が次の生徒に挨拶し始めたのを確認し、そのまま僕は教室へと向かった。

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