①-5 『奇襲(テロリズム)』 8
2017年7月25日 Boys&Gils「な…」
女性にとっても予想外の判断だったらしく、先程までの眠そうな顔が一気に目を覚ました。
アーボックは風で舞い挙げられ、荒れ狂う砂をその身に受けてダメージを受けた。なんとか藻掻いて脱出を試みたようだが、それでも砂は止む気配を見せない。
「あなたのアーボックはなかなか素早い上に賢い。重量感もあり動きも鈍いギガイアスがまともにかかっても捕まりはしない。だから…ギガイアスの近くに来た時が、唯一のチャンスだったんだ」
少年は自分の策を隠さず女性に告げた。自分の望んだ状況を作り出した今となっては、別段隠す必要もなかった。
「くっ…」
女性もそれを聞いて、しまった、と言わんばかりに歯を食いしばった。そして、砂の中でもがくアーボックの姿をまっすぐ見つめた。抜け出させる手段を考えているのだろう。
先程とは真逆の戦況が出来上がった。
「ギガイアスの特性は“砂の力”…。このまま攻撃すれば威力の増大した攻撃をアーボックはまともに受けることになる」
少年はまだ続けた。これから先の策まで敵に明かすのは、もう自分の勝ちを半ば確信した、そんな自信の現れだった。しかし、その自信は少し行き過ぎていたことを、この後彼は知ることになる。
「でも…攻撃できなきゃ意味はないよね」
ここで初めて、女性の返答。先程の焦りの色は消え、落ち着いた声色になっている。
「…!?」
少年もその言葉の意味が分からず、一歩後ずさった。嫌な予感が頭を過ぎる。
「アーボック、砂に向かって“ヘドロ爆弾”」
女性が淡々とした口調で命令すると、アーボックは砂の中で必死に口から毒物を吐き出す。やがて砂は、毒物の入り交じった紫色の渦となった。
「一体…何を…。…!!」
少年はその色と、ギガイアスの様子を見て、彼女の目的に気付いた。
「まさか…」
「ふふ。お察しの通り」
彼女の目的は、砂の中に毒を盛り、それをギガイアスに浴びせること。今やギガイアスは、硫酸の中に放り込まれたようなものだった。これでは苦しさのあまりに技を出すことが出来ない。
「ギ…ギガイアス!!砂を治めるんだ!」
少年が命令すると、砂嵐はすぐに収まり、中にいたギガイアスもアーボックも解放された。アーボックはすぐに体勢を立て直すことができたが、ギガイアスの方は毒のダメージが大きく、まだ苦しそうな表情は消えていない。
「さあ、速くなんとかしないと、毒が回って取り返しのつかないことになるわよ。それとも、大人しく街から出てくれれば、やめてあげてもいいわ」
「く…」
少年の悔しそうな表情とは裏腹に、女性は楽しげに笑っている。それもそのはず、今のこの場の支配権は、彼女が握ったも同然なのだから。
ここで少年が引けばギガイアスは助かる。しかし、引けば彼女たちの好き勝手に動かれ、何らかの計画が進行してしまうかも知れない。どちらに転んでも最悪の結果が待つ分かれ道だった。
彼はどうすることもできず、その場で俯いて立ち尽くした。
「…出て行ってくれる気はないみたいね。それならそれでいいわ。アーボック、“アイアンテール”」
するとアーボックは容赦なくその刃を動けないギガイアスに向け、襲いかかった。ここまでか、と、少年も思った。しかし、
「!?」
「な…」
背後から何者かの攻撃が炸裂し、アーボックを吹き飛ばした。
女性にとっても予想外の判断だったらしく、先程までの眠そうな顔が一気に目を覚ました。
アーボックは風で舞い挙げられ、荒れ狂う砂をその身に受けてダメージを受けた。なんとか藻掻いて脱出を試みたようだが、それでも砂は止む気配を見せない。
「あなたのアーボックはなかなか素早い上に賢い。重量感もあり動きも鈍いギガイアスがまともにかかっても捕まりはしない。だから…ギガイアスの近くに来た時が、唯一のチャンスだったんだ」
少年は自分の策を隠さず女性に告げた。自分の望んだ状況を作り出した今となっては、別段隠す必要もなかった。
「くっ…」
女性もそれを聞いて、しまった、と言わんばかりに歯を食いしばった。そして、砂の中でもがくアーボックの姿をまっすぐ見つめた。抜け出させる手段を考えているのだろう。
先程とは真逆の戦況が出来上がった。
「ギガイアスの特性は“砂の力”…。このまま攻撃すれば威力の増大した攻撃をアーボックはまともに受けることになる」
少年はまだ続けた。これから先の策まで敵に明かすのは、もう自分の勝ちを半ば確信した、そんな自信の現れだった。しかし、その自信は少し行き過ぎていたことを、この後彼は知ることになる。
「でも…攻撃できなきゃ意味はないよね」
ここで初めて、女性の返答。先程の焦りの色は消え、落ち着いた声色になっている。
「…!?」
少年もその言葉の意味が分からず、一歩後ずさった。嫌な予感が頭を過ぎる。
「アーボック、砂に向かって“ヘドロ爆弾”」
女性が淡々とした口調で命令すると、アーボックは砂の中で必死に口から毒物を吐き出す。やがて砂は、毒物の入り交じった紫色の渦となった。
「一体…何を…。…!!」
少年はその色と、ギガイアスの様子を見て、彼女の目的に気付いた。
「まさか…」
「ふふ。お察しの通り」
彼女の目的は、砂の中に毒を盛り、それをギガイアスに浴びせること。今やギガイアスは、硫酸の中に放り込まれたようなものだった。これでは苦しさのあまりに技を出すことが出来ない。
「ギ…ギガイアス!!砂を治めるんだ!」
少年が命令すると、砂嵐はすぐに収まり、中にいたギガイアスもアーボックも解放された。アーボックはすぐに体勢を立て直すことができたが、ギガイアスの方は毒のダメージが大きく、まだ苦しそうな表情は消えていない。
「さあ、速くなんとかしないと、毒が回って取り返しのつかないことになるわよ。それとも、大人しく街から出てくれれば、やめてあげてもいいわ」
「く…」
少年の悔しそうな表情とは裏腹に、女性は楽しげに笑っている。それもそのはず、今のこの場の支配権は、彼女が握ったも同然なのだから。
ここで少年が引けばギガイアスは助かる。しかし、引けば彼女たちの好き勝手に動かれ、何らかの計画が進行してしまうかも知れない。どちらに転んでも最悪の結果が待つ分かれ道だった。
彼はどうすることもできず、その場で俯いて立ち尽くした。
「…出て行ってくれる気はないみたいね。それならそれでいいわ。アーボック、“アイアンテール”」
するとアーボックは容赦なくその刃を動けないギガイアスに向け、襲いかかった。ここまでか、と、少年も思った。しかし、
「!?」
「な…」
背後から何者かの攻撃が炸裂し、アーボックを吹き飛ばした。
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