①-5 『奇襲(テロリズム)』 4
2017年7月11日 Boys&Gils 彼らは同じユニフォームなどに身を包んではいなかった。スーパーの店員、黒いスーツ、はたまたパン屋の制服など、様々な格好をしている。全部で男性3人。いや、この都市中にまだまだ潜伏しているに違いない。
少年の予想通り、彼らは街中の店や施設に潜り込み、従業員や社員に成り済まし、着々と本日に至るまでの準備をしていた、と見て間違いなかった。そして各々の施設に爆弾を仕掛け、内部から攻撃を仕掛けていたのだろう。
しかし、またさらに気になることが一つ。こうして住民の避難は完了し、今やこの街に彼ら以外の人間はほとんどいない。いたとしても、捜査に現れた警官が周辺を彷徨いている程度だろう。
つまり、今街には人の屍一つ転がっていないのである。慌てて転んだ人のものと思われる血痕が所々に見られる程度だった。大量殺戮を目的としたテロであれば、空襲、あるいは都市中の地下から攻撃するのが手っ取り早いし、そうしていれば今頃街中が屍の山になっていてもおかしくない。
しかし、現に街は今そうなっていない。つまり、彼らの目的は殺戮ではないのか。先程男たちの会話から「成功した」という旨の言葉も確認できた。つまり、これは今のこの状況を作るための計画だったのか。
現段階ではまだ確信に至るのは困難そうだった。少年はさらに詳細に彼らの目的を探るため、再び会話に耳を傾ける。
「あんたたち、予想以上の成果を上げたみたいね!」
(!)
今度は女の声だった。少し高めの、幼さの混じった声。
よく見ると、今までの三人に加え、背が少し高めの─それでも三人に比べれば低めだが─女性が加わっている。年齢は恐らく21~23といったところ。今度は街の住民の格好をしている様子はなく、怪しげな、露出の多い白い衣装をまとっていた。あの格好で街を歩けば、そうとう目立つだろう。先程から街にいたとは考えにくい。
「Yes!Sister!」
男たちは声を揃えて敬礼した。どうやら彼女は彼らより上の立場の人間らしい。裏から指揮でも執っていたのだろうか。
それまでうっすら笑みを浮かべていた彼女だったが、敬礼の直後に表情が若干険しくなり、やがて口を開く。
「…でも、二つほど、重大なミスを犯してるようね」
「えっ!?」
「な、何を…」
彼女の言葉を聞くと、男たちはそれまでの背筋を伸ばした綺麗な姿勢を崩し、動揺し始めた。その“失敗”というのが何なのか、本人たちも分かっていなかったらしい。どんな失敗なのか、少年も気になって仕方なかった。
少年の予想通り、彼らは街中の店や施設に潜り込み、従業員や社員に成り済まし、着々と本日に至るまでの準備をしていた、と見て間違いなかった。そして各々の施設に爆弾を仕掛け、内部から攻撃を仕掛けていたのだろう。
しかし、またさらに気になることが一つ。こうして住民の避難は完了し、今やこの街に彼ら以外の人間はほとんどいない。いたとしても、捜査に現れた警官が周辺を彷徨いている程度だろう。
つまり、今街には人の屍一つ転がっていないのである。慌てて転んだ人のものと思われる血痕が所々に見られる程度だった。大量殺戮を目的としたテロであれば、空襲、あるいは都市中の地下から攻撃するのが手っ取り早いし、そうしていれば今頃街中が屍の山になっていてもおかしくない。
しかし、現に街は今そうなっていない。つまり、彼らの目的は殺戮ではないのか。先程男たちの会話から「成功した」という旨の言葉も確認できた。つまり、これは今のこの状況を作るための計画だったのか。
現段階ではまだ確信に至るのは困難そうだった。少年はさらに詳細に彼らの目的を探るため、再び会話に耳を傾ける。
「あんたたち、予想以上の成果を上げたみたいね!」
(!)
今度は女の声だった。少し高めの、幼さの混じった声。
よく見ると、今までの三人に加え、背が少し高めの─それでも三人に比べれば低めだが─女性が加わっている。年齢は恐らく21~23といったところ。今度は街の住民の格好をしている様子はなく、怪しげな、露出の多い白い衣装をまとっていた。あの格好で街を歩けば、そうとう目立つだろう。先程から街にいたとは考えにくい。
「Yes!Sister!」
男たちは声を揃えて敬礼した。どうやら彼女は彼らより上の立場の人間らしい。裏から指揮でも執っていたのだろうか。
それまでうっすら笑みを浮かべていた彼女だったが、敬礼の直後に表情が若干険しくなり、やがて口を開く。
「…でも、二つほど、重大なミスを犯してるようね」
「えっ!?」
「な、何を…」
彼女の言葉を聞くと、男たちはそれまでの背筋を伸ばした綺麗な姿勢を崩し、動揺し始めた。その“失敗”というのが何なのか、本人たちも分かっていなかったらしい。どんな失敗なのか、少年も気になって仕方なかった。
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