警備員たちも、もう策が尽きたとでも言いたげに、困惑した表情を見せて言葉を止めた。それでも、彼らを足止めするのはやめなかった。確かに今外に出せば、それこそ彼らを危険にさらしてしまう可能性がある。
(くっそ…)
 少年は歯を食いしばる。自分よりも年下の少年を一人で危険な場所に行かせてしまったこと、自分が協力できないこと、そして何より、自分だけがこうして安全な場所にいることを悔やんでいた。ここまで自分を無力に感じたのも久々だった。一体、どうすれば…。
 そこで、少年はあることに気付く。
(ん…?“安全”…?)
 彼はその言葉に妙な違和感を覚える。都市中の建物が爆撃に遭い倒壊しているのに、なぜこの場所が安全なのか。この場所も人が大勢集まる建物の一つ。ならば、襲撃にはもってこいのはずだった。
 もし、本当にこの場所が襲撃対象を免れているのならば、何か、この場所を破壊してはならない理由があるはず。この場所はどんな場所か、少年は再度考えた。そしてー。
(なるほど…爆撃(コレ)をやったのは、あいつらか!)
 一つの仮説が、彼の脳裏を過ぎった。

 外を走っていた少年は、突然の事態に戸惑いながらもようやく一つの手がかりを見つけることが出来た。微かに何者かの話し声が聞こえてきたのだった。外を歩いていた住民の避難は大方終了していたはずだった。なのに、誰かがまだこの場に残って話している。考えられる可能性は二つ。この事件の捜査に当たっている刑事。そしてもう一つはー。
「これでソウリュウ全域は完了したか」
「ああ。もう住民はほぼ全員散ったぜ。これでようやく、ゆっくり“資料”を探せるってわけか」
「まさかこんなにうまくいくとはな」
 少年は彼らに見付からぬよう、恐る恐る建物の裏に隠れ、その会話を盗み聞きした。その内容は、明らかに捜査官のものではない。その事件を計画した黒幕、或いはその協力者のものに間違いない。
 そしてその正体をさらにはっきりさせようと、彼は建物の陰から少しだけ顔を出し、彼らの姿を見た。それを見て、彼の推測は確信へと変わった。

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