①-4 『歴史(なりゆき)』 5
2017年6月29日 Boys&Gils「入っていいよ」
声が耳に届いて少年は安心する。そのまま躊躇うことなくドアノブを掴み、ドアを開け、中の人物を確認した。
「よっ!久しぶりだな」
中に入っていたのは、少年よりも少し年上の少年だった。明るい表情で片手を上げて、入ってきた少年を出迎えた。
「すいません、遅くなっちゃって」
相手の少年の態度に安心したのか、年下の少年は苦笑いをしながら軽く謝った。
「いや、いいさ。そんなに急ぐことじゃない。それより、例の本、持ってきてくれたか?」
年上の少年も特に不満などを口にする様子はない。むしろ早く本題の方に移りたい、と態度で示しているようだった。
「もちろんですよ。ちょっと待っててください…」
そう言って年下の少年は、持ってきたアタッシュケースの鍵を開け、中身を漁り始める。入っていたのは全て書物、特に歴史と化学に関するものが大半を占めている。バーコードのシールは貼っていないので、この図書館の所有物ではないらしい。
「ありました。これです」
彼が取り出したのは、“授命の理 (上)”と題のついた厚さ二センチほどの本。表紙には四足歩行のポケモンと思わしき生き物のシルエットがプリントされている。少年はタイトルと表紙を確認すると、すぐに両手で男に手渡した。
「わりぃな。」
男も受け取ってすぐ表紙を確認する。その内容に納得したのか、彼はすぐ目の前の少年に向き直る。
「そんで、下巻はいつ頃届きそうなんだ?」
「明日には持って来れると思います。あいつが今日研究所に向かったんで」
「そうか」
男は少年の言葉に疑問を持つこともなく、すぐに納得した。“あいつ”というのが誰を指すのか、二人の中では共有できているらしい。
「ええっと……あったあった。絶対載ってると思ったぜ」
そして男は本をぱらぱらとめくり、三分の二くらいのページを開いた。そこに男の気にかかる情報が見えたらしい。そのページを開いた状態で、彼は目の前の少年に見せる。
「…?」
「これが例の宝玉の内部構造なんだ。正直俺達の今持ってる技術じゃ、こいつを解析する手立てがなくてさ。だからこうしてここまでこの本を持ってきてもらったわけさ」
男が見せたのは、丸い多面体の形をした宝石と、その断面図のようなもの。多くの管や気管のような形をした複雑な構造が見られた。さらに隣のページにはその解説文が短く簡潔に書かれている。
声が耳に届いて少年は安心する。そのまま躊躇うことなくドアノブを掴み、ドアを開け、中の人物を確認した。
「よっ!久しぶりだな」
中に入っていたのは、少年よりも少し年上の少年だった。明るい表情で片手を上げて、入ってきた少年を出迎えた。
「すいません、遅くなっちゃって」
相手の少年の態度に安心したのか、年下の少年は苦笑いをしながら軽く謝った。
「いや、いいさ。そんなに急ぐことじゃない。それより、例の本、持ってきてくれたか?」
年上の少年も特に不満などを口にする様子はない。むしろ早く本題の方に移りたい、と態度で示しているようだった。
「もちろんですよ。ちょっと待っててください…」
そう言って年下の少年は、持ってきたアタッシュケースの鍵を開け、中身を漁り始める。入っていたのは全て書物、特に歴史と化学に関するものが大半を占めている。バーコードのシールは貼っていないので、この図書館の所有物ではないらしい。
「ありました。これです」
彼が取り出したのは、“授命の理 (上)”と題のついた厚さ二センチほどの本。表紙には四足歩行のポケモンと思わしき生き物のシルエットがプリントされている。少年はタイトルと表紙を確認すると、すぐに両手で男に手渡した。
「わりぃな。」
男も受け取ってすぐ表紙を確認する。その内容に納得したのか、彼はすぐ目の前の少年に向き直る。
「そんで、下巻はいつ頃届きそうなんだ?」
「明日には持って来れると思います。あいつが今日研究所に向かったんで」
「そうか」
男は少年の言葉に疑問を持つこともなく、すぐに納得した。“あいつ”というのが誰を指すのか、二人の中では共有できているらしい。
「ええっと……あったあった。絶対載ってると思ったぜ」
そして男は本をぱらぱらとめくり、三分の二くらいのページを開いた。そこに男の気にかかる情報が見えたらしい。そのページを開いた状態で、彼は目の前の少年に見せる。
「…?」
「これが例の宝玉の内部構造なんだ。正直俺達の今持ってる技術じゃ、こいつを解析する手立てがなくてさ。だからこうしてここまでこの本を持ってきてもらったわけさ」
男が見せたのは、丸い多面体の形をした宝石と、その断面図のようなもの。多くの管や気管のような形をした複雑な構造が見られた。さらに隣のページにはその解説文が短く簡潔に書かれている。
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