(もう…ダメか…?)
 諦めかけ、意識を失おうとしていたその時、静かなこの林に似付かわしくない爆音が轟いた。
「!?」
 音が聞こえた方を振り返ると、僕から2、3メートルほど離れた地面に焼け焦げた跡ができており、そこから煙が立ち上っている。驚いたバチュルたちは僕への攻撃を止めて即座に逃げ出していった。

「間一髪だったわね」

 音のした方角の更に先を見ると、一人の少女と、その横に緑色の蛇状の長いポケモンが立っていた。
彼女はポケモンをボールにしまうと、僕の方へと歩み寄りつつ、こう言う。
「あなたの考えてたことは分かるわ。バチュルの電撃でモンスターボールを充電してあいつらを追い返そうとしてたんでしょ。無理な話よ」
 少女は僕のやろうとしていたことを寸分の狂いもなく言い当てた。
 彼女の出で立ちは白いキャップに長いポニーテール、ノースリーブ、ホットパンツなど、いかにもこの季節に不相応なルックスだった。見たところ僕と同じ年か、少し年上くらいに見える。
「…あんたは…?」
 僕は見知らぬ少女の突然の加勢に驚き、まず一番気になったことを訊ねた。
「ただの通りすがりよ。気にしなくて良いわ。それより君のモンスターボール、強いショックを受けて一時的にフリーズしてるから、ポケモンセンターに持って行って見てもらわないと使えないわ」
「えっ…?」
 彼女は僕のモンスターボールを見ることもなく、ボールの状態を言い当てた。試しにスイッチを押したが、確かに先程と同じで、反応していない。
「とりあえず、ちゃんとした電気の補充だけはやっといてあげる。バチュルの電気じゃ正しく作用しない可能性もあるからね。モンスターボール、貸してみて」
 僕は流されるように、腰についていたものも全て外して彼女に手渡した。すると彼女は自分のバッグから謎の機械を取り出し、僕のボールとそれをケーブルで繋ぐ。それを六つのボールでそれぞれ行うと、ボールを全て僕に返してきた。
「はい。気をつけていってね」
「は、はぁ…」
 僕は何もかもが衝撃的すぎて言葉が出ない。
 以前少女と合った覚えなど確かにない。しかし彼女は確かに、僕のことを見ただけで、今の僕の状況を正確に言い当て、さらにそこから正しい対処法まで全て知っていた。とてもただの通りすがりの一般人には思えなかった。
「それと君…。さっきのバチュルたちの様子見てた感じだと、誰かに狙われてるか、監視されてるみたいね」

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