「ああ。今ごろ俺達の仲間がうまいこと“お借りして”るかもな…ハハハハハ!」
 そんな会話をしている間に、男は少女の一メートル手前まで辿り着いていた。これ以上の接近を許したら、もう手立てはない。絶望的だった。
「さあ、ようやくこいつを…」
 男が手を伸ばそうとした、その時だった。

「!?」
「えっ!?」

 突然、少女の背後から光線の様なものが発射され、男の行く手を阻んだ。

「うっ…くっ…誰だ!?」
 煙が巻き起こり犯人の姿が隠れていたため、男は攻撃元の方に怒声をあげた。間もなく、煙の向こうからそのシルエットが姿を現した。

「たのしそーじゃん」

 一人の少年が、巨大な長い体のポケモンを引き連れて歩いてきた。

「ガキがやったのか…おい、何のつもりかは分からねえが、俺達はこの嬢ちゃんにちょっとした交渉を持ちかけてただけなんだぜ?」
 少年の姿がはっきり見えたかと思うと、リーダー男が再び口元を緩めてそう言った。相手が成人にも満たない子供であると知って、事態を軽視しているらしい。
「…交渉になんでポケモンが必要なの?」
「くっ…」
 少年の言うことは尤もだった。ただ取引を申し込むだけなら、ポケモンで攻撃する必要など無い。少年が見たのは明らかな強硬手段だった。
「…せっかくだからさ、僕も混ぜてくれない?楽しいことにさ…」
 少年は愉快そうに不敵な笑みを浮かべている。
「楽しいこと…?ほほう、兄ちゃん、弱っちいのを虐めるの、好きか?」
「…ああ。好きだよ。お前らみたいに…“弱い者虐めしか出来ない可哀想な大人”を潰すのはさ!」
「!?」
 少年はそれまでの小声から一転、声を張って男たちを威嚇した。男たちも、少年の予想外の言動に一瞬硬直していた。
「ハガネール、“りゅうのいぶき”!」
 少年が攻撃を仕掛けた。背後に控えていた巨大なポケモンに指示を出すと、そのポケモンは口から光線のようなものを発射して、敵のポケモンを襲った。はじめに男を襲った技と同じものだった。

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