①-2 『遭遇(であい)』 2
2017年4月25日 Boys&Gils「残念だが、あんたにはここで止まってもらうぜ」
「!?」
どこからともなく、聞き慣れない声が聞こえてきた。低い男の声。しかし隠れていてもハッキリと聞こえる、良く通る声だった。
「どこにいるの!?出てきなさいよ!」
少女が周囲を警戒しながら呼びかける。姿そのものは見えない。しかし、彼女の研ぎ澄まされた感覚が、声の主のいる方角を捕らえた。彼女の進行方向からちょうど右側の草木の中だった。
「お見通しっていう顔じゃねえか。仕方ない、お望み通り出てってやるよ」
そして、その主が少女の前に姿を見せた。草むらから現れたのは、一人の男性。見たところ四十路という印象だが、無精髭が生え揃っており、実際はもう少し若いのだろう。ジャージのような独特な黒いユニフォームを身にまとっており、「IC」というロゴマークが胸に刻まれている。少女はこのマークに見覚えがあった。
「フフッ、なかなか鋭いじゃねえか」
位置を特定されても、男は焦らないどころかまだまだ余裕といった表情だった。
「あなただけじゃないはず。他にも大勢いるんでしょ?全員出てきたらどうなの?」
「オイオイ、そこまでお見通しかよ。そりゃ驚いたぜ。おい野郎共!姿を見せてやれ!」
男がそう声をかけると、周囲の草むらの中や木の背後から、彼と似たような服装をした男たちが6、7人現れた。
「なあ姉ちゃん。俺達はあんたが抵抗したりしなきゃ、何もする気はねぇ。人を傷つけるのは嫌だからよ…」
男は皮肉を込めた笑みを浮かべて、少女の説得を始めた。
「ただよ。あんたのそのバッグに入っている本を、見せてくれるだけでいいんだ」
男は、少女が肩から提げているバッグを指さしながらそう言った。
そう、彼女のバッグには一冊の本が入っている。それを目的地に届けることこそ、彼女の今日の移動の目的だった。誰にも渡すわけにはいかない。
「…やっぱり知られてたのね。どこで知ったか分からないけど、この中の者は誰にも渡すわけにはいかないわ!」
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