1-① 「始動(はじまり)」 3
2017年3月5日 Boys&Gils しばらく経ってから警察が駆けつけ、男は連行された。どの程度の刑になったかはわからないが、下手をすれば世界を終わらせかねない大罪を犯したということで、いくら少女が交渉したとはいえ軽い罪では済まされないと思われる。
少女は改めて男の行動を反芻してみた。
(それにしてもおかしいわ…。もうあの宝玉は力を失って何の役にも立たないし、何の価値もない…。それは革命組織にも窃盗団にも知れ渡っているはず…)
彼女の取り返した宝玉は幾度となく各地方の悪徳組織に狙われてきた。そしてかつて一度、ある革命組織が世界の大変革にその力を利用しようとし、この地方は大混乱に陥った。幸い死者は出なかったものの、地方の大部分が壊滅し、数年経った現在も復興は完全には成されていない。
宝玉は力を完全に失い、もう機能も価値も失われて入るが、二度と人の手に渡らぬよう、アイラタワーと呼ばれる塔の地下に封印され、厳重に保管されてきた。しかし、その警備が破られ、このような事態に陥った。
(単なる偶然とは思えない…調べてみなきゃね…)
そんなことを考えていながら、彼女は自分に刺さる一つの視線に気付いていた。それも今感じたものではなく、男と話している時にはすでに自分を見ていたように思える。
少女は、いつまでも目の前に現れないその視線の主に苛立ちを覚えていた。
「トウヤ。そろそろ出てきたらどうなの?」
どこにともなく声をかけた。しかし、彼女は視線の主の大体の位置はわかっていた。
すると、彼女の背後の木が音を立てた。風で揺れているわけでもなければ、小動物がいるわけでもない。やがて音の主が姿を現した。
「バレちゃってたか」
木から下りてきたのは一人の少年だった。彼女と背丈はそれ程変わらない、帽子をかぶり、端整な顔立ちをしている。
「当たり前でしょ。あたしが気付かないとでも思ったの?」
「いんや?俺だって、自分の妹の鋭さくらいはわかってるつもりだよ」
「だったらなんであんな所に隠れてたのよ」
「あの男がいつ暴れ出すかもわからないからねー。裏から監視しててやったんだ。お前のためにさ」
「…」
少女が、トウヤと呼んだ少年を睨み付けた。“正直に言え”の合図であることを少年も即座に察知した。
少女は改めて男の行動を反芻してみた。
(それにしてもおかしいわ…。もうあの宝玉は力を失って何の役にも立たないし、何の価値もない…。それは革命組織にも窃盗団にも知れ渡っているはず…)
彼女の取り返した宝玉は幾度となく各地方の悪徳組織に狙われてきた。そしてかつて一度、ある革命組織が世界の大変革にその力を利用しようとし、この地方は大混乱に陥った。幸い死者は出なかったものの、地方の大部分が壊滅し、数年経った現在も復興は完全には成されていない。
宝玉は力を完全に失い、もう機能も価値も失われて入るが、二度と人の手に渡らぬよう、アイラタワーと呼ばれる塔の地下に封印され、厳重に保管されてきた。しかし、その警備が破られ、このような事態に陥った。
(単なる偶然とは思えない…調べてみなきゃね…)
そんなことを考えていながら、彼女は自分に刺さる一つの視線に気付いていた。それも今感じたものではなく、男と話している時にはすでに自分を見ていたように思える。
少女は、いつまでも目の前に現れないその視線の主に苛立ちを覚えていた。
「トウヤ。そろそろ出てきたらどうなの?」
どこにともなく声をかけた。しかし、彼女は視線の主の大体の位置はわかっていた。
すると、彼女の背後の木が音を立てた。風で揺れているわけでもなければ、小動物がいるわけでもない。やがて音の主が姿を現した。
「バレちゃってたか」
木から下りてきたのは一人の少年だった。彼女と背丈はそれ程変わらない、帽子をかぶり、端整な顔立ちをしている。
「当たり前でしょ。あたしが気付かないとでも思ったの?」
「いんや?俺だって、自分の妹の鋭さくらいはわかってるつもりだよ」
「だったらなんであんな所に隠れてたのよ」
「あの男がいつ暴れ出すかもわからないからねー。裏から監視しててやったんだ。お前のためにさ」
「…」
少女が、トウヤと呼んだ少年を睨み付けた。“正直に言え”の合図であることを少年も即座に察知した。
コメント